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2024.10.08

【歴史文化学科】〈 次世代継承PJ 〉男性に似せるのではなく、自分の特技や動きを活かしていく事で、女性ならではの魅力と良さが生まれてくる ― 相模里神楽垣澤社中の垣澤先生にインタビュー

各セクションが更新しているブログをピックアップ! 今回は歴史文化学科の記事です。
歴史文化学科では今年4月から新たに民俗芸能の次世代継承プロジェクトの活動が始まりました。このプロジェクトは、神奈川県民俗芸能保存協会、相模人形芝居下中座を主とした外部の団体と協働し、民俗芸能の継承問題と一般人の方々への発信に取り組んでいます。
みなさんこんにちは! 民俗芸能の次世代継承プロジェクトです。 私たちは、7月2日(火)に本学科の授業である「伝統文化の現場A」で、講師を務めてくださった 〈 相模里神楽 垣澤社中 〉の垣澤瑞貴先生にインタビューをさせていただきました!

〈 相模里神楽 垣澤社中 〉とは、日本の伝統芸能である神楽を継承する団体の一つです。100年以上の歴史を持ち、神奈川県厚木市の無形民俗文化財に指定されています。 今回お話を伺った垣澤瑞貴先生は、垣澤社中の代表を務めており、3代目家元に続く次期4代目でもあります。 神社の祭礼行事としての神楽の形を大事にしながらも、神楽という芸能を未来に確実に残し繋げていくために、エンタメ系の舞台公演の演出制作やイベントパフォーマンス、SNS活動、インバウンド事業など様々な取り組みを行い、尽力されている方です。

ここからは、そんな伝統芸能の継承者と継承問題に取り組む活動者、二つの姿を持つ垣澤先生のお話をご紹介していきたいと思います。

― 垣澤先生にとって、神楽は生まれた時からの身近なものであると思いますが、楽しさややりがいを感じる瞬間はどんな時でしょうか?
「 神楽を舞うことによって、人間性や本質的なことが見えてきます。所作や表現・特性は人それぞれであり、それは神楽にあらわれます。例えば挨拶をすることができるようになるなど、日々の行動が変化(学び、成長していく)していくことに喜びを感じます。 」

― 今日まで神楽を続けてこられた理由などはありますか?
「 神楽をやっていて、逃れるということもできますが、それをどう乗り越えるかということを考えました。女性であるということは変えられないこと=自分が変われば良いという意識を持つようになりました。 」

― 先生にとって神楽はどのような存在ですか?
「 生きていく中で、自分をいつも律してくれて、諭してくれるような、立たせていてくれるような存在です。清浄な空間を作ってくれる。変わってしまうことへの恐れもありますが、寄りかかれる柱のように、心の支えになっています。 」

― 今までにどのような役を演じられてきましたか?
「 男女やおじいさん、老婆、演奏など、ほぼ全部やってきました。 」

― その中でお気に入りのもの、演じていて特に印象に残っている役・又は難しかった役などはありますか?
「 三番叟が特に印象に残っています。三番叟は社中のみんなが踊れるもので、10 代の頃はとても苦手でした。初級なのに超上級のようなもので、ある意味トラウマでもあります。
弟と比べられていた為、三番叟を舞うのは男でなければいけないのかという疑問もありました。30 歳過ぎの時に、再び舞うことになった際もとても嫌でした。ただ、自己研鑽を続けたことである程度の形になり、納得できるようになりました。それと同時に喜びも感じました。男性は男性、女性は女性での価値を持つことが重要であり、どちらかをつぶすのではなく、融合していくことが重要であると気づきました。 」

― 活動をしているなかで、感じていること、もっとこういうことがしたい、こんなことが心配だと思っていることはありますか?
「 懸念があるとすると、女性であるということは、今までと違うことをすることという意味で目立ってしまいます。PVの撮影も、反対されてしまうという思いから、父 (3代目)には事後報告していました。その為、悪い評価や影響が社中の方々にも及んでしまうことを心配しています。日頃からの行いに気を配り、そのような事態にならないようにしています。また、若手の生徒たちの意見を聞くようにしています。色々な人の考えを取り入れるということを大事にしています。 」

― 先生は、「継承問題」について、どのように考えていらっしゃいますか?
「 伝統が結果論になってしまう性質から、過去あったことが続けられていくということや、一部分だけを継続していくというのは本質と異なっていると考えています。流動的にアップデートしていくということが重要だと思います。女性はだめ、村人だけといったこともあるが、何に重きを置くかを見定めていくことが重要です。文化を継承する人を絞るのは、選択肢としては間違っていませんが、後継者不足の現状を変えずにこれまで通りの形で続けていきたいというのは少々乱暴です。続けていくために変容を選択した場合は、リスクも背負った上で勇気を持って行動したと認識しています。また、助ける側もリスクを負わなければいけない為、全部は得られないと考えています。何を残したいのか、何が重要なのかを考えることが重要だと考えています。 」

― これからどんな風にしていきたいと考えていますか?
「 どの団体も全てを残していくということは無理だと思います。日本の文化にとって良きものを継承する人が0になってしまう等がない限りは残していきたいと思います。一部分でもいいから継承して引き継ぐということが重要で、1の人のものが歴史上の中では残っていきます。0になってしまう前に1の状態に救い挙げられたら良いと思います。先頭を切って新しいやり方をしていくことは、女性にも必要になっていきます。業界的に女性が少ないということもあるが、男性がやってきたものと同じことをやらなければいけない等、女性が周りに認められるために頑張らなければいけないこともたくさんあります。技術・信念など、女性(性別)を超えていかなければならないと考えています。 」

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以上、〈 相模里神楽 垣澤社中 〉の垣澤瑞貴先生に伝統芸能の継承についてインタビューさせて頂きました。

お話を伺って、神楽での動きを男性に似せるのではなく、自分の特技や動きを活かしていく事で、女性ならではの魅力と良さが生まれてくるという考えが印象に残りました。私は元々、神楽と聞くと男性が舞うものを想像していた為、伝統芸能の現場で実際に見学させて頂いた際は、視野が広がり、伝統芸能は徐々に進化している事を体感することが出来ました。また、今後も神楽を継承していく為には、今までの伝統をそのまま全て受け継ぐ事は難しいという現実も知りました。その為、垣澤社中では、おとぎ話と神楽を融合させたお話を作成したり、プラネタリウムで公演を行うなど、今の時代に合わせた工夫もされていて興味深かったです。垣澤瑞貴先生、インタビューにお答えいただきありがとうございました!












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