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2024.01.19

【昭和学報】学科長に聞く 歴史文化学科の魅力


学科長に聞くシリーズ。今回は、歴史文化学科について、学科長である小泉玲子教授にインタビューしました。

 
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Q. 先生の自己紹介をお願いします。

A. 私の専門は日本考古学で、主に古墳時代のことを研究テーマにしています。古墳時代の中でも埴輪というお墓に置かれた土製品のことを卒論で書きました。出身はこの大学の日本文学科(現日本語日本文学科)です。在学中に世田谷区内の発掘調査に参加したことをきっかけに考古学に興味を持ち、卒業後別の大学に行きました。
その大学を出て、職を探していたところ、昭和女子大学でお世話になった先生から助手の誘いを受けました。当時はまだ歴史文化学科はできておらず、学芸員養成コースがあった生活美学科(現環境デザイン学科)の助手として採用されました。その後、歴史文化学科講師・准教授を経て2012年から同教授を務めています。

Q. 歴史文化学科ではどのようなことを学べますか?

A. 歴文(歴史文化学科の略称)の特徴は、歴史と文化、日本と世界を横断して学べることです。この学科が出来た当初は日本分野に偏っていましたが(日本分野の教員が多かったため)、新しい先生方が入ったことで日本と海外それぞれの文化や歴史が学べるようになりました。
史学科と呼ばれるような学科は入学時に専攻が分かれているものが多いですが、歴文では様々なこと学びながら自分の興味のある分野を見つけていくカリキュラムが組まれています。

Q. 歴史文化学科の強みは何ですか?

A. MLA(学芸員、図書館司書、アーキビスト)の資格を一つの学科の中で取ることができることです。
また、学科のモットーが『手で見て足で考えて』です。授業に体験を加える工夫をしている点も歴文の強みです。物を作ってみることや、実際に町でいろいろな方に話を聞くこと、古文書を読むことも体験です。座学で講義を聞いたり自分たちで意見を述べあったりすることも意味があります。でも、単に聞くよりも、見たり触ったりという五感で得る経験はとても大きな学びにつながると思います。

Q. 歴文の授業に特徴はありますか?

A. 歴文のカリキュラムには概論、基礎、特論、ゼミなどがあります。概論や基礎でその分野の基本を学べます。大学の専門分野では、今まで学んできたことを『本当にそうなのか』と疑問を持って取り組みます。もちろん基礎的な知識はあるに越したことはありませんが、それがない生徒でも入門的な内容から入るので問題なく学習できます。
学科ではこの概論と基礎が選択必修となっています。これはほかの分野を学ぶ後押しする役割を持っています。自分の興味がない分野でも、授業を受けたことで新たな発見や興味が生まれる可能性もあります。自身が専門としたい分野が固まっている生徒も多いですが、新入生にはまだなんとなく歴史が好きだという人もいます。そのような学生も様々な授業を通じて興味ある分野を探すことができます。

Q. 歴文では多くのプロジェクト活動を行っています。先生が考えるプロジェクト活動の意義は何ですか?

A. 授業やアルバイトとは異なる学びができることです。地域の方に話を聞いたり、他大学の人と一緒に活動したり、その方法もプロジェクトによって異なります。大学で学んだことを社会でどのように活かせるかを知り、自分の興味を発展させたり、学びの意味について考えたりする機会になります。

Q. 先生のプロジェクトである神奈川県大井町の「中屋敷発掘調査」について教えてください。

A. このプロジェクトは考古学実習Cと結びついているため、1年や2年の時に発掘に参加すると単位を取ることができます。単位が取れるプロジェクトは珍しいと思います。
このプロジェクトでは学生に発掘を運営してもらっています。もちろん予算を取ったりいろんな県との書類を用意したり、地主さんと交渉したりするのは私の仕事ですが、実際に発掘調査団の組織や役割分担をするのは学生です。
私は先輩が後輩に教えていく形が理想だと思っています。発掘は夏休みに実施しますが、5月末から毎週勉強会を開いています。そこでは考古学ゼミの3、4年生や大学院生が後輩に発掘に必要な技術を教えています。内容をきちんと把握しないと教えられないので、より学びを深めたり、学年を超えた交流が出来ます。
実際に発掘に携わるような仕事につくと現場で人を動かすことになるため、小さい規模ではありますが、その訓練も兼ねています。

Q. 3年生からはゼミが始まります。ゼミについて教えてください。

A. 歴文では10人の教員がそれぞれ一つの分野を担当しています。各分野に特化した方法論や研究の現状などを深く学びます。ほとんどの学生は2年生の後期には所属したいゼミが決まっています。ゼミの分野は卒業論文のテーマに直結するとても重要なものになります。

Q. 小泉先生のゼミではどのようなことをやっていますか?

A. 日本考古学は物を扱う学問ですが、様々な方法論があるので論文を読むことで知識を広めます。3年の前期で学術論文に慣れること、自身の興味をもてそうな分野を探すことを目的に、論文を一緒に読み解いたり、学生が自分で選んだ論文の内容を他のゼミ生に紹介するなどの取り組みをしています。
 
3年の後期は卒論のテーマを決めなくてはならないので、夏休みに発掘したり、博物館に行って自身が扱いたいテーマを決めて行きます。大まかなテーマが決まれば、自分のやりたいことについて書かれた本や論文を読み、調べた内容を発表しています。

Q. 歴文生の特徴は何でしょうか?

A. 真面目な人が多いです。自分の興味を持ったことや調べたいことについてコツコツと取り組むことが求められるので、他学科の先生方からも真面目だとよくいわれます。おとなしいと思われがちですが、最近はいろいろな活動に関わる積極的な方が増えてきています。

Q. 歴文生として理想とされる姿勢とは?

A. 自分で何が真実なのかを確認する目を持つことです。人が言っていることや今まで発表されていることを鵜呑みにせず、真実は何なのかを絶えず意識することが大切だと思います。
あとはフットワークが軽いことが理想ですね。美術に興味があるなら美術館に行く、考古学なら考古学の展覧会に行く、など方法はいろいろあります。学内の学びだけで満足しない姿勢は求められると思います。この大学は地の利がよいので、特に地方から出てくる方はこの立地を上手く利用して欲しいです。

Q. 卒業生の進路は?

A. 土地の歴史や文化などを理解した上に成り立つ観光業のように、歴史や文化に関する仕事が多くあります。一見歴文と関係ないように見えるシステムエンジニアは、4年間自分のやりたいことを突き詰めていくという研究姿勢を生かすことが出来ます。「歴文の学びが役に立つのか」と思われがちですが、自分のテーマについての調査、内容を論理的にまとめ、プレゼンするスキルはどの仕事にも生かすことができます。このスキルは社会において非常に強い武器になると思います。
考古学では埋蔵文化財、文化財行政に関わっている人もいます。考古学を学べる大学は都内にもありますが、女子大出身で文化財行政に関わる仕事で活躍している人の割合は多い印象です。
資格では教員や学芸員が多い印象を受けます。直接その学びを生かせる職業に就くことが出来るのは歴文ならではだと思います。歴文では文化財の保存修復の分野があります。文献史学や考古学、民俗学などがある大学は多くありますが、文化財の保存修復を学べる大学はなかなかありません。理系の要素もあるので文系の人たちは少し難しいかもしれません。実際に卒業生の中にも紙の修復の仕事をしている人もいます。専門的な仕事に就くには専門知識を身に着けたり、採用試験に勝ち残らないといけませんが、そのような歴文ならではの学びを生かす進路も学科の特徴だと思います。


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髙須結菜

人間文化学部歴史文化学科1年。
マイブームは特撮作品鑑賞。












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