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2022.04.25

【昭和学報】シンポジウム「知ろう!自分の中のアンコンシャスバイアス」に参加して

記者紹介

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池嶋透子
人間社会学部 現代教養学科 2年
2022年4月9日、昭和女子大学の学生と現代ビジネス研究所研究員によるシンポジウム「知ろう!自分の中のアンコンシャスバイアス」が、昭和女子大学 10号館 スタディールームにて、オンラインとのハイブリッド形式で行われた。
 「アンコンシャスバイアス」とは、無意識の偏見や思い込みのことである。自分の中のアンコンシャスバイアスを知り、克服することは、どのようによりよい社会・暮らしにつながるのか? 今回のシンポジウムでは、学生からプロジェクトの成果発表に続き、社会心理学者の北村英哉東洋大学教授による講義を聴き、参加者が分かれてグループディスカッションを行い、全体で共有した。

講師紹介

 北村英哉東洋大学 社会学部 社会心理学科教授。専門は感情心理学・社会心理学。主な著書に、『あなたにもある無意識の偏見 : アンコンシャスバイアス』、『偏見や差別はなぜ起こる?』(共著)等がある。

アンコンシャスバイアスによって可能性・選択肢を狭めないためには

 まず、成果発表では、広告・TV・企業活動、おもちゃ・色、生理・性教育を テーマにプロジェクトを進めた学生たちが、日本のジェンダーギャップ指数が156カ国中120位、G7*でも最下位であるということには、アンコンシャスバイアスが関係しているのではないかと述べた。
*先進7カ国首脳会議(Group of Seven)のこと。フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダで構成される。

【広告・TV・企業活動グループ】
 広告やメディア、企業活動におけるアンコンシャスバイアスの調査内容を発表した。近年の脱毛に関する企業(脱毛サロン・クリニック等)では、体毛の嫌悪感を煽るネガティブな広告から、“美しい肌によって幸せに生きることができる”というメッセージが込められたキャッチコピーを用いて、脱毛意欲を掻き立てる広告へと変化しているという。しかし、一見ポジティブに思える後者の広告にも、体毛がない肌=美しいというアンコンシャスバイアスが潜んでいると指摘した。調査した内容はInstagramやTwitter、noteといったSNSを活用して発信し、学内でのメール配信を実施したという。

【おもちゃ・色のグループ】
「色によって得られる特性が異なるため、おもちゃのカラーバリエーションを増やすことで遊びの幅や将来の可能性が広がるのではないか」と仮定し、おもちゃと色の関係について、小学生以下の子供を持つ保護者に対しアンケートを行い、その結果を発表した。イラストを使って自分の子供に購入したいおもちゃを選択する設問では、①青色系・ミニカー等、②ピンク系・人形等、③黄色系・積み木等という選択肢の中で、女児の保護者は①、男児の保護者は②を選択した人が少数であったという。また、男親に比べて女親の方が、③のニュートラルなおもちゃを選択する傾向があったという。

【生理・性教育のグループ】
 海外の性教育事例に関する調査を行い、生理をテーマとしたワークショップを開催したことを発表した。学生たちは、日本の小学校では女子のみが生理について教わるのに対し、スウェーデンの小学校では男女共に勉強しているという。このことが、性教育における1つの問題点であり、日本における性へのタブー感を作り出し、アンコンシャスバイアスを生み出している原因なのではないかと指摘した。
 ワークショップでは正しい知識を身に着け、生理・性教育のアンコンシャスバイアスを取り除くことを目的とし、生理クイズや多様な生理用品の紹介、布ナプキン製作等を行った。生理・性教育のグループの学生は、生理に関する悩みを話し合い、アンコンシャスバイアスを減らす良い機会となったと述べた。

先入観や固定観念で決めつけてはいないか?

 続いて、北村教授はアンコンシャスバイアスを「行為者本人が意識せずに行うことにまつわる歪み」と定義し、議論を展開した。遺伝子的には「女性は理系が苦手」というデータがないのにもかかわらず、理系に進む女子学生の割合は少ないという事実を取り上げ、ステレオタイプ・偏見・差別といった言葉の概念を区別した。即ち、性別等の集団カテゴリ―に対して抱く典型的な認知をステレオタイプ、ステレオタイプに付随する感情を偏見、それに基づく行為が差別であると説明した。

偏見のない社会はみんなが住みやすい社会

 北村教授の講義の中からアンコンシャスバイアスを克服していく上で、特に重要だと感じた点を2点紹介する。1点目が、”システム正当化理論”という問題を解決する必要があるという指摘だ。システム正当化理論とは、自分が不利な立場に置かれていたり、差別を受けていたりしていても、これが当たり前であると正当化し、受け入れてしまう心理のことだという。
 2点目が、偏見のない社会は住みやすい社会であるという指摘だ。北村教授は、女性の暮らしづらさを改善することが、男性の暮らしづらさの改善につながると述べた。また、マイノリティへの理解が深まり、これまであった問題が対処されれば、全員が生きやすくなると強調した。
 グループディスカッションでは、シンポジウムに参加した異なる世代・性別・職業の人々が、さまざまな意見を交わし、自分の中の気づきを共有した。北村教授は難しい問題を諦めずに考える姿勢や、考え続けることが、人のためにも自分を成長させるためにも、最も重要であると述べた。
 昨年6月からプロジェクトを進めてきた永合由美子研究員は、次世代を担う今の若者たちが、子どもたちのロールモデルとなれるよう手助けし、自身も歩みを止めず、学び続けていきたいと述べ、シンポジウムを締めくくった。
研究内容については、昭和女子大学現代ビジネス研究所紀要の報告に詳しい。
 
昭和女子大学 現代ビジネス研究所 2021 年度紀要

シンポジウムに参加して

 幼少期に遊んでいたおもちゃやアニメ作品・テレビ番組、学校生活での出来事、街中の広告など、育ってきた環境が人々の価値観や人生の選択に影響しているということが分かった。自分の中のアンコンシャスバイアスに気づくことで、人生が今より豊かになるかもしれない。”当たり前”を疑い、これからも学び続けていきたいと思う。
「知ろう!自分の中のアンコンシャスバイアス」Instagramはこちら
https://www.instagram.com/swu_uncon/

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